The Figure in the Carpet

短編小説を読んだから、その感想を書いた

リチャード・マシスン : 男と女から生まれて

概要

某月某日──今日、明るくなるとお母さんはぼくをへどがでるものと呼んだ。おまえは忌まわしいものなのよといった。 

 「ぼく」は虫を食べる。歩くとぴしゃぴしゃ音がする。「ぼく」はお父さんに殴られ片腕からしずくを床に巻き散らす。這い降りてくる黒蜘蛛を眺める。お母さんが鎖を外してくれると「ぼく」は小窓から外を見ることができる。窓の外には「ぼく」より小さい「小さいお父さん」と「小さいお母さん」が無数にいる。お父さんは「ぼく」の手足を縛りあげる。

あるとき小さいお母さんが小さな生き物をつれて「ぼく」のところへやってきた。「ぼく」はその生き物を殺した。もし、お父さんとお母さんが再び「ぼく」を殴ろうとしたら、今度は仕返しをしよう。「ぼく」はすべての足をつかって天井からぶらさがった。

 

感想その他

得体の知れない生物のことを、得体の知れない生物自身の語りによって描いているので、人間である読者には「それ」が最後まで得体の知れないままである。この得体の知れなさというのが、かなり薄気味悪い。不気味なものとは、こういうものだろう。これ、上手いな、と思った。『男と女から生まれて』は1950年に発表されたリチャード・マシスンのデビュー作だという。

強いてこの生き物をイメージするとすれば、ジョン・カーペンター監督映画『遊星からの物体X』に出てくる、人間の頭に蜘蛛の足が生えたようなモンスターというかクリーチャーみたいなものか。

 

データ

Born of Man and Woman

仁賀克雄 訳、『不思議の森のアリス』(論創社)所収 

不思議の森のアリス (ダーク・ファンタジー・コレクション)

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