The Figure in the Carpet

短編小説を読んだから、その感想を書いた

『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』より第3話、第4話

概要

第3話

ティル・オイレンシュピーゲルは綱渡りの練習をする。最初は家の屋根裏部屋で練習をしていたのだが、それを見た母親に激しく叱られる。しばらくして今度は家の裏手の高窓からザーレ川をはさんで対岸まで綱を張る。それを見た若者たちが何が起こるのだろうとやってくる。オイレンシュピーゲルは見物人の若者たちの前で綱渡りをする。綱渡りで川を越えようとする。だがその刹那、息子の企みを知った母親が綱をぷつんと切ってしまう。オイレンシュピーゲルはザーレ川に落ちる。見物人の若者たちは川に落ちたオイレンシュピーゲルを見て笑い転げる。

オイレンシュピーゲルは川に落ちたことよりも、若者たちに嘲笑されたことによりダメージを受け、腹を立てる。彼らにどんな復讐をしてやろうか、と悪戯の計画を立てる。

 

第4話

オイレンシュピーゲルの仕返しはこうだ。再び、だが今度は別の家から(母親に邪魔をされないためだろうか?)綱を張り、ザーレ川の対岸に結ぶ。それを見て、オイレンシュピーゲルがまた綱渡りをするのだろうと若者たちがやってくる。オイレンシュピーゲルは新奇な芸当をするため、と若者たちに左足の靴を貸してほしいと頼む。約120個の靴が手渡され、オイレンシュピーゲルはそれを紐でくくりつけ、それを持ち綱の上に上る。綱渡りの最中、靴をくくりつけた紐が切られる。靴は、ばらばらになり落ちる。群衆は一斉に自分の靴を取り戻そうとする。靴の奪い合いになる。喧嘩が始まる。それを高見から見下ろすティル・オイレンシュピーゲル。復讐=悪戯は成功した。

 

感想その他

今度のお話から、ティルが誰かから何かしらのダメージを受ける→仕返しの悪戯をする、というパターンが出てくる。そして今回の場合は、ティルの被害(ダメージ)とティルの加害(悪戯)がそれなりに釣り合っている感じだ。綱が切られたので、紐を切る。嘲笑されたので、嘲笑した者たちを嘲笑する。うん、釣り合っている感じだ。

もちろん厳密にいえば、最初の綱渡りの綱を切ったのは母親でありティルを嘲笑した若者たちではない。そのため、あってしかるべき整合性を作者が求めたのかどうかはわからないが、第4話の最後に、ティルが母親をちょっと騙すエピソードが追加されている。ティルの「靴事件」を知らない母親は、ティルが家にこもって靴をつくろっていることに、やっと息子がまともになったと大いに満足をする。ティルはあの「靴事件」の後、若者たちの仕返しを恐れ、家から出られないだけなのに。

 

データ

阿部謹也 訳、岩波書店  

ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら (岩波文庫)
 

 

 

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