The Figure in the Carpet

短編小説を読んだから、その感想を書いた

ウィリアム・サローヤン : アメリカを旅する者への旧世界流アドバイス

概要

邪なゴタゴタから逃れるために、と、老ガルロ(「僕」のおじさんのおじさん)は汽車の旅の危険性について僕とメリクおじさんに講釈する。

慎重に席を選び、座ったらキョロキョロしない、偽物の車掌に気をつけろ、タバコを勧めてくる若者を相手にするな、綺麗な若い女は娼婦だから目を合わせるな、イカサマなトランプゲームに加わるな……云々。

エス、サーとおじさんは言う。

翌日、僕のおじさんは汽車でニューヨークへ向かって旅立った。老ガルロが心配した旅の危険などありそうもなかった。

次の日、メリクおじさんは「自分から」若い男にタバコを勧め、綺麗な若い女性と同席し、喫煙者では率先してポーカーを始めた。おじさんは乗客全員と知り合いになった。楽しい旅になった。

 

感想その他

訳者の柴田元幸が解説で書いているように「ユルいおじさん」のお話というのがぴったりくる。「真面目に世間とつきあっている」両親と違い、どこか夢想家でどこか怠け者でどこかふらふらして「世の中と致命的にずれている」おじさん。そんなふうに、「僕」はなぜメリクおじさんが好きなのかをしっかりと読み解いている。おそらく、どんな規範にも(規範への抵抗を要求する規範にも)、こんな「ユルいおじさん」ならば無敵であろう。

 

データ

柴田元幸 訳、『僕の名はアラム』(新潮社)所収 

僕の名はアラム (新潮文庫)

僕の名はアラム (新潮文庫)